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【2025年最新税制対応】役員報酬の定期同額給与違反、その是正と税務上の影響を徹底解説

【2025年最新税制対応】役員報酬の定期同額給与違反、その是正と税務上の影響を徹底解説

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【2025年最新税制対応】役員報酬の定期同額給与違反、その是正と税務上の影響を徹底解説

一人社長や小規模法人の経営者の皆様、役員報酬の決定は会社の税務・社会保険に大きな影響を与える重要な経営判断です。特に「定期同額給与」のルールは厳格であり、うっかりミスで違反してしまうと、思わぬ税務上のペナルティを招く可能性があります。

本記事では、2025年10月20日時点の最新税制・法令に基づき、役員報酬の定期同額給与に違反してしまった場合の具体的な是正方法と、それに伴う税務・社会保険上の影響を税務専門家の視点から徹底解説します。

1. 定期同額給与とは?なぜ重要なのか

役員報酬は、法人税法上、原則として「定期同額給与」として支給されなければ、法人の損金(経費)として認められません。これは、法人が恣意的に役員報酬を操作し、利益調整を行うことを防ぐ目的があります。

定期同額給与の基本ルール

定期同額給与とは、以下のいずれかの給与を指します(法人税法第34条)。

  1. 毎月同額支給される給与: 1ヶ月以下の期間ごとに、その期間に係る通常の給与として定額を支給するもの。
  2. 事前確定届出給与: 所定の時期に確定額を支給する旨を事前に税務署に届け出た給与。
  3. 利益連動給与: 業務執行役員に対して、利益に関する指標を基礎として算定される給与(上場企業等に限定)。

一人社長や小規模法人では、主に「毎月同額支給される給与」が定期同額給与の対象となります。事業年度開始から3ヶ月以内に株主総会等で役員報酬額を決定し、その後は毎月同額を支給することが原則です。

違反時のペナルティ

定期同額給与のルールに違反した場合、その違反部分の役員報酬は損金として認められず、法人の課税所得が増加し、結果として法人税の負担が増大します。

2. 定期同額給与に違反した場合の税務上の影響

役員報酬の金額を年度の途中で変更したり、不定期に支給したりすると、その変更・不定期支給部分が「定期同額給与」に該当しないと判断され、税務上のペナルティが発生します。

損金不算入による法人税の増加

定期同額給与に該当しない役員報酬は、法人の損金として認められません(法人税基本通達8-2-11)。これにより、法人の課税所得が増加し、結果として法人税の負担が増大します。

【重要】返金による損金不算入の解消は原則不可

「うっかり多く支給してしまったので返金すれば大丈夫」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、これは原則として誤りです。法人税法上、一度支給された役員給与は、たとえ会社に返金されたとしても、その支給の事実が覆されることはありません。

返金された金額は、会社側で「雑収入」などとして計上されることになりますが、当初の損金不算入部分は原則として解消されません。また、源泉徴収税額の精算も限定的であり、安易な返金対応はかえって会計処理を複雑にし、税務調査での指摘リスクを高める可能性があります。必ず税務専門家と慎重に検討してください。

法人税の追加負担試算(2025年最新税率)

一人社長や資本金1億円以下の中小法人における法人税の実効税率は、所得金額に応じて段階的に適用されます。一律30%で試算すると過大評価となるため注意が必要です。

【2025年最新税率(資本金1億円以下の中小法人)】

  • 年800万円以下の所得部分:15%(軽減税率。適用期限は2027年3月31日までに開始する事業年度まで
  • 年800万円超の所得部分:23.2%

これに地方法人税、法人住民税が加わり、実効税率は約21%~33%程度となります。損金不算入額が発生した場合、この税率を基に追加の法人税負担が発生します。

【コラム:2026年4月開始予定の防衛特別法人税について】

2026年4月1日以降に開始する事業年度から、法人税額に対して4%の「防衛特別法人税」が上乗せされる予定です。これにより、法人税の負担がさらに増加する可能性があります。役員報酬の決定においては、将来の税負担増も考慮に入れる必要があります。

3. 定期同額給与違反が発覚した場合の是正方法と手続き

違反が確定してしまった場合でも、適切な手続きを踏むことで、今後のリスクを最小限に抑えることが可能です。

ステップ1:違反内容の確認と原因究明

  • いつ、どのような理由で、いくら定期同額給与に違反したのかを正確に把握します。
  • 今後の再発防止策を検討します。

ステップ2:税務申告における対応

損金不算入額が発生した場合、確定申告書においてその金額を「加算」し、法人税額を計算します。

【更正の請求について】

もし過去の事業年度で定期同額給与違反による損金不算入を見落としていた場合、税務署に対して「更正の請求」を行うことで、過払い分の法人税の還付を求めることができます。

  • 請求期限:原則として、法定申告期限から5年以内
  • 手続きには、違反の事実を証明する資料や、正しい税額計算書が必要です。専門家と相談の上、慎重に進めましょう。

ステップ3:社会保険への影響と随時改定

役員報酬の変更は、社会保険料にも影響を与えます。特に、報酬月額が大幅に変動した場合は「随時改定」の対象となる可能性があります。

【社会保険の随時改定要件(2025年最新)】

以下の全ての要件を満たす場合に、標準報酬月額が改定されます。

  1. 固定的賃金(役員報酬など)の変動があったこと。
  2. 変動月からの3ヶ月間に支給された報酬の平均月額が、現在の標準報酬月額と比べて2等級以上の差が生じたこと。
  3. 変動月からの3ヶ月間の各月において、支払基礎日数が17日以上であること。
    • (特定短時間労働者の場合は11日以上)
    • 支払基礎日数とは、給与計算の対象となる日数のことです。月給制の場合は暦日数が該当します。

【随時改定の手続きとスケジュール】

随時改定の要件を満たした場合、事業主は「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」を日本年金機構に提出します。

  • 届出後の適用開始月:変動月から4ヶ月目の報酬から新しい標準報酬月額が適用されます。
    • 例:4月に報酬が変動し、4月・5月・6月の平均で2等級以上の差が生じ、かつ各月の支払基礎日数が17日以上であれば、7月分の報酬から新しい標準報酬月額が適用されます。

社会保険料は、標準報酬月額に基づいて計算されるため、随時改定が行われると、会社負担・役員個人の負担ともに社会保険料が変動します。

4. 今後の役員報酬決定における注意点

  • 事業年度開始後3ヶ月以内の決定を厳守: 役員報酬の金額は、事業年度開始から3ヶ月以内に株主総会等で決定し、議事録に残しましょう。
  • 安易な変更は避ける: 原則として、事業年度途中の役員報酬変更は避けるべきです。やむを得ない事情で変更する場合は、臨時改定事由(役員の職務内容の変更、経営状況の著しい悪化など)に該当するかを慎重に判断し、税務専門家と相談してください。
  • 税制改正動向の注視: 税制は頻繁に改正されます。常に最新の情報を確認し、適切な役員報酬の決定を心がけましょう。

まとめ

役員報酬の定期同額給与のルールは複雑ですが、その重要性は非常に高いです。違反してしまった場合の税務・社会保険上のペナルティは、会社の経営に大きな影響を与えかねません。

本記事で解説した最新の税制・法令に基づいた情報を参考に、適切な役員報酬の決定と管理を行いましょう。もし、すでに違反してしまった、あるいは不安な点がある場合は、速やかに税務専門家にご相談ください。


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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については顧問税理士にご相談ください。