定期同額給与とは?決算前に慌てないための実務チェックリスト【2025年最新】
法人を設立して、自分の給与(役員報酬)を決めるとき、「毎月同じ金額にしないといけない」と聞いたことはありませんか?
「本当にそれで合ってる?」「もし間違っていたらどうしよう…」
特に、一人社長や小規模法人の経営者の方で、普段は税理士さんとやり取りがない場合、決算が近づくにつれて不安に感じますよね。
💡 この記事で解決できること
- 「定期同額給与」の基本的なルールがわかります。
- あなたの役員報酬がルール通りか、チェックリストで簡単に確認できます。
- 一人社長が陥りがちな失敗ケースと、その対策がわかります。
⚠️ ご注意ください 本記事は「法人の役員報酬」に関する解説です。個人事業主(フリーランス)の生活費の引き出しなどには、この「定期同額給与」の概念は適用されません。
この記事では、そんな方のために「定期同額給与」のルールを、難しい専門用語を使わずに、5分でわかるチェックリスト形式で解説します。決算前にサッと確認して、安心して事業に集中しましょう。
なぜ「毎月同じ額」じゃないとダメなの?
そもそも、なぜ税務署は役員報酬が「毎月同じ額」であることに注目するのでしょうか。
理由はとてもシンプルで、会社の利益操作を防ぐためです。これは、法人税法で定められた大切なルールなんですよ。
もし、決算直前に「今期は思ったより利益が出たから、役員報酬を増やして会社の利益を減らそう」ということが自由にできてしまうと、法人税を不当に安くすることが可能になってしまいますよね。
そうした利益操作を防ぎ、「期首に決めた金額を、毎月きちんと支払っている」というルールを守ることで、役員報酬を会社の経費(損金)として認めてもらえるのです。このルールが「定期同額給与」です。
【実務チェックリスト】あなたの役員報酬は大丈夫?
それでは、あなたの役員報酬が定期同額給与のルールを守れているか、一緒に確認していきましょう。
✅ チェック1:毎月の総支給額は「1円単位」で同じですか?
基本中の基本ですが、毎月の総支給額が完全に同額であることが必要です。
- OK例: 毎月きっかり500,000円を支払っている。
- 注意例: 銀行の振込手数料を差し引いて振り込んでしまい、月によって手取り額が微妙に違う。
源泉所得税や社会保険料などを差し引いた後の「手取り額」ではなく、税金などが引かれる前の「総支給額(額面)」が毎月同額でなければなりません。
💡 実務メモ:振込手数料について 振込手数料は会社負担で「支払手数料」として経費に計上し、役員への報酬額は毎月同額を計上・支給することをおすすめします。手数料を役員報酬から差し引いてしまうと、総支給額が月によって変動し、定期同額給与の要件から外れてしまうリスクが高まります。
✅ チェック2:事業年度開始から「3ヶ月以内」に金額を決めましたか?
役員報酬の金額は、いつでも自由に変更できるわけではありません。これは法人税法施行令で定められています。
原則として、事業年度が始まってから3ヶ月以内に開催される株主総会などで決定し、その事業年度が終わるまで、ずっと同じ金額を支払い続ける必要があります。
- 例: 3月決算の会社なら、4月1日から6月30日までの間に役員報酬を決定・改定します。
この期間を過ぎて金額を変更してしまうと、原則として経費として認められなくなるので注意が必要です。
⚠️ 3ヶ月以内改定の注意点 事業年度開始から3ヶ月以内に役員報酬を改定した場合でも、改定後の各支給時期の金額が同額であることが前提です。改定前の期間に遡って金額を調整したり、改定後の金額が月によって変動したりすると、定期同額給与とは認められません。賃金台帳などでしっかり確認しましょう。
✅ チェック3:金額を決めた証拠(議事録)は残っていますか?
一人社長だと忘れがちですが、役員報酬の金額を決めた際には、株主総会の議事録を作成し、きちんと保管しておく義務があります。
議事録は、税務調査の際に「いつ、いくらに決めたのか」を客観的に証明するための重要な証拠となります。決めた日付と金額が明記された議事録を必ず作成しておきましょう。
✅ チェック4:役員報酬の支給間隔は「1カ月以下の一定期間ごと」ですか?
定期同額給与は、毎月など「1カ月以下の一定期間ごと」に支給されることが要件です。例えば、2ヶ月に1回や半年に1回といった支給方法は、原則として定期同額給与には該当しません。
✅ チェック5:支給日の変更があっても、各回の総支給額は同一ですか?
もし、年度の途中で役員報酬の支給日を変更した場合(例:月末払いから25日払いへ)、その変更があった月も含めて、各回の総支給額が同額である必要があります。支給日が変わったからといって、その月の総支給額が減ったり増えたりしないように注意しましょう。
よくある違反ケースと注意点
ルールはシンプルですが、実務では意図せず違反してしまうケースもあります。一人社長が「やりがち」な失敗例を見ていきましょう。
⚠️ ケース1:うっかり違う金額を振り込んでしまった
「先月、資金繰りが厳しくて少し減額してしまった」「忙しくて、間違えて1,000円多く振り込んでしまった」というケースです。
たとえ悪意がなくても、総支給額が変わってしまうと定期同額給与の要件から外れてしまいます。もし間違えてしまった場合は、すぐに税理士に相談しましょう。
⚠️ ケース2:年度の途中で業績が良かったので増額した
事業年度の開始から3ヶ月を過ぎた後に、「思ったより利益が出たから」といって役員報酬を増額するのは典型的なNG例です。増額した部分の金額は、会社の経費(損金)として認められません。
⚠️ ケース3:役員の地位や職務内容が大きく変わった(臨時改定事由・業績悪化改定事由)
社長が交代したり、非常勤役員が常勤になったりするなど、役員の地位や職務内容に重大な変更があった場合は、年度の途中でも報酬額を変更できることがあります。これを「臨時改定事由」といいます。
また、会社の業績が著しく悪化し、株主との関係上、役員報酬を減額せざるを得ないような場合も、年度の途中での減額が認められることがあります。これを「業績悪化改定事由」といいます。
ただし、これらの判断は非常に専門的で、客観的な証拠(例えば、試算表、金融機関からの借入条件変更通知、取締役会議事録など)が必要になります。必ず税理士に相談してから進めるようにしてくださいね。
もし違反してしまったらどうなる?
もし定期同額給与のルールに違反していると判断された場合、ルールから外れた部分の金額は、会社の経費(損金)として認められません。
例えば、月50万円の報酬を、年度の途中で60万円に増額した場合、差額の10万円は経費になりません。その結果、会社の利益がその分増えることになり、追加で法人税を支払う必要が出てきます。
「ちょっとくらい大丈夫だろう」という油断が、後で大きな納税につながる可能性があります。例えば、増額した部分が年間100万円だった場合、会社の法人税が約20万円〜30万円(実効税率による)増える可能性もあります。ルールはしっかり守ることが大切ですね。
来年度の役員報酬で失敗しないために
ここまで読んで、「自分の役員報酬、来年はどうしよう…」と考え始めた方も多いかもしれませんね。
役員報酬の金額は、高すぎると個人の社会保険料や所得税の負担が重くなり、低すぎると会社の法人税が高くなってしまいます。このバランスをうまくとることが、手元に残るお金を最大化するカギになります。
「じゃあ、具体的にいくらにすれば一番いいの?」と思いますよね。
そんなときは、当サイトが提供する**無料のシミュレーションツール「役員報酬決め方ナビ」**をぜひ使ってみてください。
会社の利益やあなたの年齢などを入力するだけで、社会保険料・所得税・法人税の総負担額が最も少なくなる役員報酬の金額を、簡単に見つけ出すことができます。
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- ✅ 来年度の役員報酬を決める際の、税理士さんへの相談資料としても活用できます
来年度の役員報酬で後悔しないために、まずは一度、最適な金額をシミュレーションしてみてはいかがでしょうか。
まとめ:最終的な判断は税理士にご相談を
定期同額給与のルールは、会社の税金に直結する非常に重要なポイントです。今回のチェックリストで、基本的な確認はできたかと思います。
- ✅ 毎月の総支給額は1円単位で同じか?
- ✅ 事業年度開始から3ヶ月以内に決めたか?(改定後も同額か)
- ✅ 議事録はきちんと保管しているか?
- ✅ 支給間隔は「1カ月以下の一定期間ごと」か?
- ✅ 支給日の変更があっても各回の総支給額は同一か?
ただし、この記事やシミュレーションツールは、あくまでご自身で検討するための参考情報です。最終的な判断は、事実関係・契約関係・会計処理・法令解釈等により異なります。最新法令や所轄税務署の判断が異なる場合、また個別事情については、必ず税理士等の専門家へご相談ください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については顧問税理士にご相談ください。