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【2025年最新】フリーランス/一人社長は月額報酬と退職金をどう設計するか

【2025年最新】フリーランス/一人社長は月額報酬と退職金をどう設計するか

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「将来のために退職金を準備したいけど、今の月額報酬を減らすのはためらわれる…」

個人事業主や法人オーナーであれば、一度はこんな風に悩んだことがあるのではないでしょうか。特に2025年(令和7年)の税制改正では、基礎控除の拡充や退職所得控除の計算ルールなど、税制優遇の仕組みがより明確化されています。

この記事では、個人事業主・フリーランスの退職資金づくりから、一人社長・法人オーナーの役員退職金設計まで、2025年最新の税制に準拠して解説します。月額報酬との最適なバランスを見つけるためのヒントを、具体的な税額シミュレーションや手取り比較を交えてわかりやすくご紹介します。

この記事で分かること:

  • 個人事業主・フリーランスが活用できる税制優遇制度
  • 法人オーナーが役員退職金で得られる税務上のメリットと注意点
  • 月額報酬と退職金の最適なバランスを見つけるための考え方
  • 2025年最新税制における具体的な計算例

税理士に相談する前の情報整理として、ぜひご活用ください。

個人事業主・フリーランスの退職資金づくり(小規模企業共済・iDeCo)

個人事業主やフリーランスには、会社員や法人役員のような「退職金制度」は原則としてありません。しかし、税制優遇を受けながら将来の資金を準備できる代替制度が用意されています。

小規模企業共済:事業主のための退職金制度

小規模企業共済は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主が廃業・引退した場合に、退職金として共済金を受け取れる制度です。

  • 掛金全額が所得控除の対象: 支払った掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得から控除され、所得税・住民税の負担を軽減できます。
  • 共済金は退職所得扱い: 共済金を受け取る際は、税制上「退職所得」または「公的年金等の雑所得」として扱われ、大きな税制優遇を受けられます。

参考:中小機構「小規模企業共済」

iDeCo(個人型確定拠出年金):老後資金形成の強い味方

iDeCoは、自分で掛金を拠出し、自分で運用商品を選んで運用する私的年金制度です。

  • 掛金全額が所得控除の対象: 小規模企業共済と同様に、掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象となります。
  • 運用益が非課税: 運用によって得られた利益には税金がかかりません。
  • 受取時も税制優遇: 年金として受け取る場合は「公的年金等の雑所得控除」、一時金として受け取る場合は「退職所得控除」の対象となり、税負担が軽減されます。

参考:厚生労働省「iDeCoの概要」

将来的に法人化を検討している場合は、法人設立時に役員報酬を「定期同額給与」として設計し、役員賞与は「事前確定届出給与」として税務署へ事前届出を行うことで損金算入の可否が変わる点に注意が必要です。

法人オーナーの退職金設計(功績倍率・適正額)

法人オーナーにとっての役員退職金は、法人・個人双方に大きな税制メリットをもたらす重要な制度です。しかし、その設計には税務上のルールを正確に理解しておく必要があります。

1. 法人の節税効果:『相当と認められる金額』の範囲で損金算入

会社が役員に支払う退職金は、原則として損金(経費)として計上できます。これにより、その事業年度の法人税負担を軽減することが可能です。

ただし、役員退職金は「不相当に高額」と判断される部分は損金不算入となります。支給の事実、株主総会等の決議、そして算定根拠の整備が不可欠です。損金算入は、実際に退職金を支給した事業年度に行われます。

[1] 法人税法および法人税基本通達(役員退職給与の『不相当高額』部分の損金不算入/損金算入は支給時)

2. 個人の節税効果:税負担が非常に軽い「退職所得」

退職金を受け取る役員個人にとっても、税金の負担が非常に軽くなるという大きなメリットがあります。給与や賞与が「給与所得」として扱われるのに対し、退職金は「退職所得」として別の区分で計算されます。

この退職所得には「退職所得控除」という大きな控除枠が用意されており、勤続年数が長いほど税負担が軽くなります。

退職所得控除額の計算(2025年最新)

  • 勤続年数20年以下: 40万円 × 勤続年数(最低80万円)
  • 勤続年数20年超: 800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年)

例えば、勤続30年の場合の退職所得控除額は1,500万円です。退職金がこの控除額以内であれば、退職所得は生じず実質的に課税されません。

さらに、控除額を超えた部分についても、その2分の1だけが課税対象となるため、給与で受け取るよりも税金が格段に安くなります。

【注意】役員等で勤続年数5年以下の退職手当等 2025年(令和7年)の税制改正も踏まえ、役員等で勤続年数5年以下の退職手当等については、退職所得控除後の金額の2分の1課税の特例は適用されません。この場合、控除後の全額が課税対象となります。

[2] 所得税法(退職所得の金額の計算)、平成25年分以後の特例不適用の取扱い 参考:国税庁「退職所得の計算方法」

3. 資金準備手段:内部留保・積立・生命保険の比較検討

退職金の資金準備は、将来の大きな支出に備えるだけでなく、会社の財務を安定させる効果もあります。資金準備手段としては、内部留保、定期積立、生命保険の活用などが考えられます。

生命保険は資金準備手段の一つですが、解約損益や益金算入、キャッシュフローへの影響が大きい場合があります。自社の状況に合わせて、複数の手段を比較検討することが重要です。

退職金の「適正額」を把握する功績倍率法

役員退職金は、税務上「不相当に高額」と判断されると損金として認められない部分が生じます。一般的に、退職金の適正額を算出する目安として「功績倍率法」が用いられます。

最終の月額報酬 × 役員在任年数 × 功績倍率

この「功績倍率」は法定式ではなく実務上の目安であり、役職に応じて1.0〜3.0倍程度が一般的とされています(例:社長であれば2.0〜3.0倍)。しかし、この相場はあくまで参考であり、職責、会社の業績、同業他社との比較、そして総株主の合理性で総合的に判断されることを理解しておく必要があります。

月額報酬と社会保険の実務(定期同額・随時改定)

役員退職金の設計を考える上で、現在の月額報酬と社会保険料の仕組みを理解することは不可欠です。

役員給与の損金算入ルール:定期同額給与と事前確定届出給与

法人税法上、役員給与が損金算入されるためには、原則として以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 定期同額給与: 毎月同額で支給される給与。期中に恣意的に増減させると、その増減額は損金不算入となるリスクがあります。
  • 事前確定届出給与: 株主総会等の決議に基づき、税務署へ事前に届出を行い、届出どおりの期日・金額で支給される賞与。届出どおりに支給されなかった場合、全額が損金不算入となります。

これらのルールを理解し、役員報酬の設計を行うことが、税務リスクを回避し、節税効果を最大化するために重要です。

[3] 法人税法(定期同額給与・事前確定届出給与の制度) 参考:国税庁「役員給与に関するQ&A」

月額報酬と社会保険料への影響(定時決定・随時改定)

月額報酬が変動すると、それに伴い社会保険料(健康保険・厚生年金)の負担も変わります。社会保険料は「標準報酬月額」に基づいて計算され、この標準報酬月額は以下のタイミングで見直されます。

  • 定時決定: 毎年1回、4月・5月・6月の報酬月額の平均を基に、その年の9月から翌年8月までの標準報酬月額が決定されます。
  • 随時改定: 昇給や降給などにより、固定的賃金が大幅に変動し、かつその変動後の報酬が継続して3ヶ月間、従前の標準報酬月額の等級と2等級以上の差が生じた場合に、標準報酬月額が改定されます。

役員報酬の期中改定は、税務上の「定期同額給与」の要件と、社会保険上の「随時改定」の要件を同時に満たすように設計する必要があります。

参考:日本年金機構「標準報酬月額の決め方」

退職金支給時の申告実務

役員退職金を支給する際は、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出・回収することが前提となります。この申告書が提出されていない場合、原則として退職金の額に対して20.42%(復興特別所得税含む)の源泉徴収が行われるため、注意が必要です。

具体計算例と注意点(勤続30年のケース等)

ここでは、2025年最新の税制に基づいた退職所得の具体的な計算例を見ていきましょう。

【計算例】

  • 退職金支給額:3,000万円
  • 役員勤続年数:30年(役員等で勤続年数5年超のケース)
  1. 退職所得控除額の計算 勤続年数20年超の場合の計算式:800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年) 控除額 = 800万円 + 70万円 × (30年 − 20年) = 800万円 + 70万円 × 10年 = 800万円 + 700万円 = 1,500万円

  2. 退職所得の金額の計算 退職所得の金額 = (退職金支給額 − 退職所得控除額) × 1/2 退職所得の金額 = (3,000万円 − 1,500万円) × 1/2 = 1,500万円 × 1/2 = 750万円

この750万円が、他の所得とは分離して課税される「退職所得」となります。ここに所得税の累進税率が適用されます。退職金3,000万円のうち、1,500万円が控除され、残りの1,500万円のさらに半分である750万円にのみ課税されるため、税負担が大幅に軽減されることがわかります。

2025年最新税制における周辺制度の補足

  • 消費税の免税点・インボイス制度: 個人事業主の場合、前々年の課税売上が1,000万円以下であれば消費税の納税義務が免除されます。インボイス制度の経過措置(80%控除、50%控除)は、2025年以降も段階的に適用されますが、最新の終了時期や控除率は国税庁の公表情報を必ずご確認ください。 [4] 国税庁「消費税の免税事業者・課税事業者」 [5] 国税庁「インボイス制度の概要」

まずは今期の報酬を最適化(シミュレーション)

退職金の準備は、10年、20年といった長期的な視点で税理士とじっくり計画すべきものです。

一方で、「今期」の役員報酬をどうするかという短期的な最適化は、もっと手軽に検討できます。社会保険料や税金の負担を最小限に抑える「月額報酬」と「賞与」の最適なバランスを見つけることは、会社のキャッシュフローを改善するために毎年重要な作業です。

当サイトの「役員報酬決め方ナビ」を使えば、会社の利益やあなたの年齢などを入力するだけで、会社と個人の手取りが最大になる役員報酬の配分を無料でシミュレーションできます。このシミュレーションは、役員給与が「事前確定届出給与」の前提に立って行われます。期首での見直しを推奨します。

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まとめ:長期的な視点で税理士と相談を

役員退職金と月額報酬のバランスは、会社の状況や経営者のライフプランによって答えが変わる、非常に個別性の高いテーマです。

  • 個人事業主・フリーランスは、小規模企業共済やiDeCoを活用して税制優遇を受けながら退職資金を準備できる。
  • 法人オーナーにとっての役員退職金は、法人・個人ともに大きな節税メリットがあるが、税務上の適正額や損金算入ルールを厳守する必要がある。
  • その原資は現在の月額報酬であり、両者はトレードオフの関係。
  • 最適なバランスは、ライフプランから逆算し、税理士と相談して決めるのが最善。

この記事が、あなたの会社の財務戦略を考える上での一助となれば幸いです。

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については顧問税理士にご相談ください。