2025年最新|決算後の役員報酬はいつ変更できる?一人社長向け改定スケジュールと注意点
法人化して事業が軌道に乗ってくると、「役員報酬はいつ、どうやって変更すればいいんだろう?」という疑問が出てきますよね。特に一人社長や小規模法人の方は、相談できる相手が少なく、不安に感じることも多いのではないでしょうか。
実は、役員報酬はいつでも自由に変更できるわけではありません。タイミングを間違えると、せっかく支払った報酬が会社の経費として認められず、余計な税金を支払うことになってしまう可能性があります。
【結論】 役員報酬は「事業年度開始から3か月以内」に金額を決定し、その月から毎月同じ額を支給し続けるのが原則です。この期間を過ぎて変更する場合は、「臨時改定事由」という特別な理由が必要になります。
この記事は法人(株式会社など)の役員報酬に関するものです。個人事業主の方には役員報酬という概念はなく、事業主が生活費などを引き出す「事業主貸」は経費にはなりませんのでご注意くださいね。
この記事では、一人社長や小規模法人経営者の方に向けて、以下の点を分かりやすく解説します。
- なぜ役員報酬の変更タイミングは厳格なのか
- 役員報酬を変更できる原則的なタイミングと例外
- 【決算月別】具体的な報酬改定スケジュール
- 一人社長がやるべき3つの手続きステップ
- 役員賞与(ボーナス)の注意点
この記事を読めば、役員報酬変更の正しい知識が身につき、安心して手続きを進められるようになります。
なぜ役員報酬の変更タイミングは厳格なのか?
役員報酬の変更ルールが厳しい理由は、会社の利益操作を防ぐためです。
もし、決算直前に「今期は思ったより会社の利益が出たから、役員報酬を増やして会社の利益を減らそう」ということが自由にできてしまうと、法人税を不当に安くすることが可能になってしまいます。
そこで、税金のルールでは「毎月決まった日に、決まった金額を支払う給与(=定期同額給与)」しか原則として会社の経費(損金)にできない、と定められています。
この「毎月同額」というルールを守るために、報酬額を変更できるタイミングが厳しく制限されているのですね。
役員報酬を変更できる原則的なタイミングと例外
役員報酬の金額を変更できるのは、原則として「事業年度開始の日から3か月以内」です。
例えば、3月決算の会社(事業年度が4月1日〜翌年3月31日)であれば、4月1日から3か月後の6月30日までに新しい報酬額を決定し、その月から支給を開始する必要があります。この期間内であれば、新しい事業年度の利益予測に基づいて、役員報酬を増額したり減額したりできます。
大切なのは、この期間内に新しい報酬額を決定し、その月から毎月同じ額を支給し続けることです。一度決めた報酬額を、月の途中で変更したり、過去に遡って変更したりすることは原則として認められません。
期首3か月を過ぎても変えられるケース(臨時改定事由)
原則として事業年度開始から3か月以内とされていますが、例外的に、期首3か月を過ぎてから役員報酬を変更しても会社の経費として認められる場合があります。これを「臨時改定事由」と呼びます。
具体的には、以下のような特別な事情があった場合です。
- 役職の変更や職務内容の重大な変更があった場合
- 例:代表取締役から平取締役に降格した、あるいは兼務役員から専任役員になったなど、役員の責任や業務内容が大きく変わった場合。
- 証拠として、辞令や取締役会議事録などを残しておきましょう。
- 会社の経営状況が著しく悪化した場合
- 例:倒産の危機に瀕している、債務超過に陥ったなど、客観的に見て役員報酬を減額せざるを得ない状況になった場合。
- 証拠として、経営会議の議事録や財務諸表、経済情勢を示す資料などを残しておくことが重要です。
これらの臨時改定事由に該当するかどうかの判断は、個別の事情によって異なります。判断に迷う場合は、必ず税理士さんに相談してくださいね。
【決算月別】役員報酬の改定スケジュール
ご自身の会社の決算月に合わせて、いつまでに報酬改定をすれば良いか確認してみましょう。
| 決算月 | 事業年度 | 報酬改定の期限 |
|---|---|---|
| 3月決算 | 4月1日~3月31日 | 6月30日まで |
| 4月決算 | 5月1日~4月30日 | 7月31日まで |
| 5月決算 | 6月1日~5月31日 | 8月31日まで |
| 6月決算 | 7月1日~6月30日 | 9月30日まで |
| 7月決算 | 8月1日~7月31日 | 10月31日まで |
| 8月決算 | 9月1日~8月31日 | 11月30日まで |
| 9月決算 | 10月1日~9月30日 | 12月31日まで |
| 10月決算 | 11月1日~10月31日 | 1月31日まで |
| 11月決算 | 12月1日~11月30日 | 2月末日まで |
| 12月決算 | 1月1日~12月31日 | 3月31日まで |
| 1月決算 | 2月1日~1月31日 | 4月30日まで |
| 2月決算 | 3月1日~2月28日 | 5月31日まで |
注:2月末日は閏年の場合2月29日となります。表の期限は『該当事業年度の期首から3か月以内の末日』を示しています。
よく「決算日から2か月以内に株主総会を開いて、その決定から1か月以内に改定手続きを」という話を聞くかもしれませんが、これは税務上の「定期同額給与」のルールとは少し異なります。定時株主総会は会社法上「毎事業年度終了後の一定の時期」に開催されるものですが、税務上の役員報酬の改定期限はあくまで「事業年度開始の日から3か月以内」です。法人税の申告期限(原則として決算日から2か月以内)と混同しないように注意しましょう。
一人社長向け!役員報酬の変更手続き 3ステップ
「株主総会って、一人しかいないのにどうやるの?」と疑問に思いますよね。大丈夫です。一人社長の場合、手続きはとてもシンプルです。以下の3ステップで進めましょう。
ステップ1: 役員報酬額を決定する
一人社長の場合、自分自身が株主であり、取締役です。そのため、形式的な会議は不要で、「いつから、いくらに報酬を変更するか」を自分で決定すれば、それが株主総会の決議となります。
大切なのは、「いつ、何を決めたか」を客観的な証拠として残しておくことです。そのために、次のステップが重要になります。
ステップ2: 「株主総会議事録」を作成・保管する
役員報酬の決定内容を「株主総会議事録」という書類にして残しておきましょう。これは、税務調査などで「いつ、どのように役員報酬を決定したか」を証明するための非常に重要な証拠となります。もし取締役会を設置している会社であれば、「取締役会議事録」を作成してくださいね。
難しく考える必要はありません。以下の項目が記載された簡単なメモのようなもので大丈夫です。
- 開催日時: 2025年5月25日 午前10時00分
- 開催場所: 本店所在地
- 出席者: 株主兼取締役 〇〇 〇〇
- 決議事項: 第〇期の役員報酬について
- 議事の概要:
- 議長より、第〇期(2025年4月1日~2026年3月31日)の役員報酬を月額〇〇円としたい旨の提案があり、満場一致で可決承認された。
- 効力発生日(支給開始月): 2025年4月1日
- 日付と署名: 2025年5月25日 株式会社〇〇 代表取締役 〇〇 〇〇
この議事録を作成し、会社の書類として大切に保管しておきましょう。
ステップ3: 社会保険の手続きを行う(必要な場合)
役員報酬を大幅に変更した場合、社会保険料の金額も変わるため、年金事務所への届出(被保険者報酬月額変更届)が必要になることがあります。
これを「随時改定」と呼び、以下の3つの条件をすべて満たす場合に手続きが必要です。
- 昇給や降給などで、毎月の給与額に変動があった
- 変動があった月からの3か月間の平均給与額が、現在の社会保険料の計算のもとになる金額(=標準報酬月額)と比べて2等級以上の差が生じた
- 3か月とも、給与の支払基礎日数が17日以上ある(一人社長の場合は通常満たします)
これらの条件を満たした場合、原則として変動月から4か月目の月から新しい標準報酬月額が適用され、社会保険料が変わります。例えば、5月に報酬額が変動し、5月・6月・7月の3か月で平均を計算して2等級以上の差が出た場合、9月から新しい社会保険料が適用される、といったイメージです。
社会保険料は会社と個人の両方にとって結構大きな負担です。報酬額を変更する際は、社会保険料がどのくらい変わるのかも事前にシミュレーションしておくことが大切です。
役員賞与(ボーナス)を支給したい場合の注意点
「役員報酬とは別に、ボーナスも出したいな」と思うこともあるかもしれませんね。役員賞与(ボーナス)を会社の経費として認めてもらうには、原則として「事前確定届出給与」という特別な手続きが必要です。
これは、役員賞与を支給する前に、いつ、誰に、いくら支払うかを税務署に届け出ておく、というルールです。この届出なしに役員賞与を支払ってしまうと、原則として会社の経費として認められず、法人税の負担が増えてしまうので注意しましょう。
期首3か月チェックリスト
役員報酬の改定をスムーズに進めるために、以下の項目をチェックしてみましょう。
- 新しい事業年度の開始日はいつですか?
- 報酬改定の期限(事業年度開始から3か月以内)はいつまでですか?
- 新しい役員報酬額は決定しましたか?
- 株主総会議事録(または取締役会議事録)は作成しましたか?
- 議事録には「効力発生日(支給開始月)」を明記しましたか?
- 新しい報酬額での支給は、期限内の月から開始されますか?
- 社会保険の随時改定が必要かどうか確認しましたか?
- 必要な場合、年金事務所への「被保険者報酬月額変更届」は速やかに提出しましたか?
タイミングの次は「最適な金額」をシミュレーションしましょう
役員報酬を変更する正しいタイミングと手続きはご理解いただけたでしょうか。
次に重要になるのが、「いくらに変更するのが一番得なのか?」という点です。役員報酬の金額によって、社会保険料、所得税、法人税の総額は大きく変わります。このバランスを考えるのが、結構難しいんですよね。
この複雑な計算を、ご自身で何度も行うのはとても大変ですよね。
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まとめ:正しいタイミングで手続きを
役員報酬の変更は、会社の節税や個人の手取り額に直結する重要な手続きです。
- 変更期限: 原則として事業年度開始から3か月以内に決定し、その月から支給開始
- 例外: 役職変更や経営悪化などの臨時改定事由があれば、期中変更も可能
- 必要なこと: 株主総会議事録(または取締役会議事録)の作成と保管
- 注意点: 社会保険料の変更手続きも忘れずに。役員賞与は事前確定届出給与の届出が必要
正しいタイミングと手順を守ることで、税務上のリスクを避け、安心して経営に集中できますね。
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最終的な意思決定は、必ず顧問税理士にご相談ください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については顧問税理士にご相談ください。