社会保険料で損しない!役員報酬の等級またぎ対策【一人社長向け】【2025年最新】
法人化して役員報酬を決めるとき、「月給はキリのいい金額がいいかな」と何となく決めていませんか?
実は、その「キリのいい金額」が、かえって社会保険料を高くしてしまっているかもしれません。役員報酬の月額がほんの少し違うだけで、年間の社会保険料が数万円も変わってしまう「等級またぎ」という落とし穴があるんです。
この記事では、一人社長や小規模法人の方が社会保険料で損をしないために、
- 「等級またぎ」とは何か?
- どのくらい負担が変わるのか(具体例)
- 自分の役員報酬が損していないか確認する簡単な方法
を、専門用語をなるべく使わずに分かりやすく解説します。
そもそも社会保険料はどう決まる?「標準報酬月額」のキホン
まず、毎月の給与から天引きされる健康保険料や厚生年金保険料(社会保険料)が、どうやって決まるかご存知でしょうか。
これは、実際の給与額そのものではなく、「標準報酬月額(ひょうじゅんほうしゅうげつがく)」という、給与を一定の範囲で区切った金額をもとに計算されます。
国が定めた等級表(2025年時点では健康保険は全50等級、厚生年金は全32等級)があって、自分の給与がどの等級に入るかで、支払う保険料が決まる仕組みです。
「なんだか難しそう…」と感じるかもしれませんが、大丈夫です。 「給料の金額によって、いくつかのランクに分けられて、ランクごとに保険料が決まっている」 とだけ覚えておけばOKです。
この「ランクの境目」こそが、今回ご説明する「等級またぎ」のポイントになります。
たった1円で年間約10.7万円の差(会社+本人)?「等級またぎ」の具体例
では、等級をまたぐと、どれくらい社会保険料が変わるのでしょうか。2025年(令和7年)東京の保険料率で具体例を見てみましょう。
前提条件
- 社長1人だけの会社(東京都)
- 45歳(介護保険料の対象。介護保険料は40歳から64歳までの方に適用されます。)
- 役員報酬の候補が2つ
- Aさん: 月額 634,999円
- Bさん: 月額 635,000円
AさんとBさんの役員報酬の差は、たったの1円です。 ところが、社会保険料の等級表に当てはめてみると、驚きの結果になります。
2025年(令和7年)東京の保険料率
健康保険料率:9.91% (会社負担 4.955% / 本人負担 4.955%)
介護保険料率:1.59% (会社負担 0.795% / 本人負担 0.795%)
厚生年金保険料率:18.30% (会社負担 9.15% / 本人負担 9.15%)
Aさん(月額 634,999円)
- 報酬月額605,000円〜635,000円の範囲に該当し、標準報酬月額: 620,000円
- 年間の社会保険料(会社負担+本人負担): 約221.7万円
- (内訳:健康保険料 約14.7万円、介護保険料 約2.4万円、厚生年金保険料 約27.2万円)×2(会社+本人)×12ヶ月 = 約2,217,120円
- 年間の社会保険料(本人負担のみ): 約110.8万円
Bさん(月額 635,000円)
- 報酬月額635,000円〜665,000円の範囲に該当し、標準報酬月額: 650,000円
- 年間の社会保険料(会社負担+本人負担): 約232.4万円
- (内訳:健康保険料 約15.4万円、介護保険料 約2.5万円、厚生年金保険料 約28.5万円)×2(会社+本人)×12ヶ月 = 約2,324,400円
- 年間の社会保険料(本人負担のみ): 約116.2万円
なんと、月給が1円違うだけで、年間の社会保険料が会社と本人合わせて約10.7万円も変わってしまうのです。本人負担だけでも約5.36万円の差が生じます。
BさんはAさんより報酬を多くもらっているのに、社会保険料の負担増が大きすぎて、会社と個人の手元に残るお金(キャッシュ)は、かえってAさんより少なくなってしまいます。
これが「等級またぎ」の怖いところです。せっかく頑張って稼いだ利益が、知らず知らずのうちに社会保険料として消えてしまうのは、とてももったいないですよね。
あなたの役員報酬は大丈夫?簡単な確認ステップ
「自分の役員報酬は損していないかな?」と不安になった方もいるかもしれません。でも、ご安心ください。以下の2ステップで簡単に確認できます。
ステップ1: 協会けんぽの「保険料額表」を開く
まず、ご自身の会社がある都道府県の「協会けんぽ 保険料額表」を検索して開きます。PDFファイルで公開されています。
ステップ2: 自分の報酬が「報酬月額」のどこにあるか確認
保険料額表の中に「報酬月額」という欄があります。ここに「○○円~△△円」と書かれているので、ご自身の役員報酬(月額)がどの範囲に入っているか探してみてください。
例えば、上記の例で言えば、「605,000円~635,000円」の範囲であれば標準報酬月額は62万円、「635,000円~665,000円」の範囲であれば標準報酬月額は65万円となります。
もし、ご自身の報酬額が範囲の上限ギリギリ(例えば「605,000円~635,000円」の範囲で、報酬が634,000円など)なら、等級またぎのワナをうまく回避できている可能性が高いです。
逆に、範囲の下限に非常に近い(例えば「635,000円~665,000円」の範囲で、報酬が636,000円など)場合は、少し報酬額を見直すだけで、社会保険料を大きく節約できるかもしれません。
役員報酬はいつでも変更できるわけではないので注意
「じゃあ、すぐに役員報酬を変更しよう!」と思った方もいるかもしれませんが、少し待ってください。
法人税法上、役員報酬を会社の経費(損金)として認めてもらうためには、「定期同額給与」の要件を満たす必要があります。原則として、事業年度の途中での役員報酬の変更は認められません。変更が認められるのは、主に以下のケースです。
- 事業年度開始から3ヶ月以内の改定
- 職制上の地位の変更や経営状況の著しい悪化など、やむを得ない事由による改定
また、上記とは別に「事前確定届出給与」や「一定の業績連動給与」といった制度もあります。社会保険上は、賃金の固定的変更等により「随時改定(標準報酬の改定)」が行われることもありますが、税務上の損金算入とは別の話になります。
決算前のタイミングで、次の事業年度の役員報酬をいくらにするか検討する際に、この「等級またぎ」の視点もぜひ加えてみてください。
まとめ:最適な役員報酬はシミュレーションで見つけよう
「等級またぎ」は、知っているかどうかで手元に残るお金が大きく変わる、重要なポイントです。特に一人社長や小規模法人にとっては、見過ごせない節約術と言えるでしょう。
とはいえ、「自分の場合はどうなんだろう?」「もっと全体で最適な金額を知りたい」と感じますよね。役員報酬の最適額は、社会保険料だけでなく、法人税や所得税、住民税も合わせて考える必要があります。
そんな複雑な計算を自動で行ってくれるのが、当サイトの「役員報酬決め方ナビ」です。
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決算前や法人設立時など、役員報酬を決める際には、ぜひ一度お試しください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については顧問税理士にご相談ください。