【2025年版】役員報酬の住民税・所得税はいくら?速算表の読み方と計算手順を解説
「役員報酬を決めたけど、所得税や住民税がいくらになるのか分からない」「計算方法が複雑で難しそう…」 一人社長や小規模法人の経営者にとって、税金の計算は悩みの種ですよね。本記事は法人役員(給与所得)の方向けです。個人事業主の方の税金計算とは異なりますのでご注意ください。
特に、所得税を計算するときに使う「速算表」は、数字が並んでいて一見すると難しく感じるかもしれません。
でも、ご安心ください。この記事では、役員報酬にかかる所得税・住民税の計算方法を、誰でも分かるように4つのステップで解説します。この記事を読めば、ご自身の税額がどのくらいになるのか、ざっくりと把握できるようになります。
この記事で分かること
- 住民税・所得税が計算されるまでの全体像
- 所得税の速算表の正しい読み方と使い方
- 年収600万円の一人社長を例にした具体的な計算シミュレーション
- 面倒な計算を自動化する無料ツールの紹介
住民税・所得税計算の全体像:4つのステップ
役員報酬から所得税や住民税を計算するには、実はいくつかのステップを踏む必要があります。速算表を使うのは、その中の一つに過ぎません。
全体像は、以下の4ステップです。
- 給与所得を計算する
- 課税所得を計算する
- 所得税を計算する(ここで速算表を使います)
- 住民税を計算する
一つずつ、順番に見ていきましょう。
ステップ1:給与所得を計算する
まず、年間の役員報酬の総額から「給与所得控除」というものを差し引いて、「給与所得」を計算します。
給与所得控除は、会社員でいうところの経費のようなもので、収入に応じて自動的に決まります。
計算式
給与所得 = 年間役員報酬 - 給与所得控除額
給与所得控除の金額は、以下の表を使って計算します。
給与所得控除(2025年分)
| 給与等の収入金額 (年間役員報酬) | 給与所得控除額 |
|---|---|
| 1,625,000円まで | 550,000円 |
| 1,625,001円から 1,800,000円まで | 収入金額 × 40% - 100,000円 |
| 1,800,001円から 3,600,000円まで | 収入金額 × 30% + 80,000円 |
| 3,600,001円から 6,600,000円まで | 収入金額 × 20% + 440,000円 |
| 6,600,001円から 8,500,000円まで | 収入金額 × 10% + 1,100,000円 |
| 8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
(出典:国税庁「No.1410 給与所得控除」)
例えば、年間役員報酬が600万円の場合、上の表の「3,600,001円から 6,600,000円まで」に該当します。 給与所得控除額は 600万円 × 20% + 440,000円 = 164万円 となります。
したがって、給与所得は 600万円 - 164万円 = 436万円 です。
ステップ2:課税所得を計算する
次に、ステップ1で計算した「給与所得」から、さらに「所得控除」を差し引いて、「課税所得」を計算します。
課税所得とは、その名の通り税金が課される対象となる所得のことです。
計算式
課税所得 = 給与所得 - 所得控除の合計額
所得控除には様々な種類がありますが、ほとんどの方に関係するのが以下の2つです。
- 基礎控除: 全員が一律で受けられる控除。合計所得金額が2,400万円以下の場合、所得税では48万円です。住民税の基礎控除は原則43万円となります。
- 社会保険料控除: 1年間に支払った健康保険料や厚生年金保険料などの合計額。全額が控除されます。
他にも、生命保険料控除や配偶者控除などがありますが、ここでは計算をシンプルにするため、この2つで計算を進めます。
ステップ3:所得税を計算する(速算表の使い方)
いよいよ、所得税の速算表の出番です。ステップ2で計算した「課税所得」を使って、所得税を計算します。
計算式
所得税額 = 課税所得 × 税率 - 控除額
所得税の速算表(2025年分)
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円超 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万円超 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万円超 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万円超 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
(出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」)
この表の使い方はとても簡単です。ご自身の課税所得がどの範囲に当てはまるかを探し、対応する「税率」と「控除額」を計算式に当てはめるだけです。
※実際には、この金額に復興特別所得税(所得税額の2.1%)が加わります。復興特別所得税は1円未満を切り捨てて計算します。
ステップ4:住民税を計算する
最後に、住民税を計算します。住民税の計算は所得税よりもシンプルです。
計算式
住民税額 ≒ 課税所得 × 10% + 均等割(約5,000円)+森林環境税(1,000円)
住民税の税率は、お住まいの地域によって多少異なりますが、基本的には**課税所得の約10%**と考えておけば、大きくずれることはありません。また、所得にかかわらず定額で課される「均等割」が約5,000円かかります。さらに、2024年度から国税である森林環境税1,000円が住民税と併せて徴収されます。
【具体例】役員報酬600万円の一人社長でシミュレーション
それでは、これまでの4ステップを使って、具体的なモデルケースで税額を計算してみましょう。
【前提条件】
- 役員報酬: 600万円/年(月額50万円)
- 年齢: 45歳(東京都、協会けんぽ)
- 扶養家族: なし
- その他控除: なし
- 年間の社会保険料: 約88万円(標準報酬月額50万円の場合の概算。地域や年度により変動するため、最新の料率表をご確認ください。)
▼ステップ1:給与所得の計算
- 給与所得控除額:
600万円 × 20% + 440,000円 = 164万円 - 給与所得:
600万円 - 164万円 = 436万円
▼ステップ2:課税所得の計算
- 所得税の課税所得の計算
- 所得控除の合計:
基礎控除48万円 + 社会保険料控除88万円 = 136万円 - 所得税の課税所得:
436万円 - 136万円 = 300万円
- 所得控除の合計:
- 住民税の課税所得の計算
- 所得控除の合計:
基礎控除43万円 + 社会保険料控除88万円 = 131万円 - 住民税の課税所得:
436万円 - 131万円 = 305万円
- 所得控除の合計:
▼ステップ3:所得税の計算 所得税の課税所得300万円は、速算表の「195万円超 330万円以下」に該当します。
- 税率:10%
- 控除額:97,500円
- 所得税額:
300万円 × 10% - 97,500円 = 202,500円 - 復興特別所得税:
202,500円 × 2.1% = 4,252.5円→4,252円(1円未満切捨) - 所得税の合計(年額):
202,500円 + 4,252円 = 206,752円
▼ステップ4:住民税の計算 住民税の課税所得305万円を使用します。
- 住民税額:
305万円 × 10% + 均等割5,000円 + 森林環境税1,000円 = 311,000円 - 住民税の合計(年額):
約311,000円
【計算結果】 役員報酬600万円の場合、年間の税金は所得税が約20.7万円、住民税が約31.1万円、合計で約51.8万円となりました。 社会保険料の約88万円と合わせると、年間の負担は140万円近くになります。結構な金額ですよね。
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まとめ
今回は、役員報酬にかかる所得税・住民税の計算方法と、速算表の読み方について解説しました。
計算の4ステップ
- 給与所得 = 役員報酬 - 給与所得控除
- 課税所得 = 給与所得 - 所得控除(所得税と住民税で基礎控除額が異なります)
- 所得税 = 所得税の課税所得 × 税率 - 控除額
- 住民税 ≒ 住民税の課税所得 × 10% + 均等割 + 森林環境税
この手順で、ご自身の税額をおおまかに把握することができます。
ただし、この記事で紹介したのはあくまで概算の計算方法です。実際の税額は、個別の状況によって変動します。 最終的な役員報酬の決定や税務申告については、必ず顧問税理士にご相談ください。本記事は2025年分の税制に基づいていますが、税制改正や個別の状況により変動する可能性があります。
本記事やシミュレーションツールが、専門家である税理士に相談する前の、事前の情報整理や検討材料としてお役に立てれば幸いです。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については顧問税理士にご相談ください。