助成金・補助金を活用する経営者必見!役員報酬設計で注意すべき3つのポイント【2025年最新版】
会社の成長を後押ししてくれる「助成金」や「補助金」。設備投資や人材採用を考える経営者にとって、非常に心強い制度ですよね。
しかし、申請を検討する中で、「自分の役員報酬は、経費として認められるんだろうか?」と疑問に思ったことはありませんか?
役員報酬の扱いを間違えると、せっかくの申請が通らなかったり、対象経費が減ってしまったりすることも。
この記事では、2025年最新の補助金制度に基づき、助成金・補助金の申請における役員報酬の基本的な考え方と、申請前に必ず確認しておきたい3つのポイントを、小規模法人のオーナー様向けに分かりやすく解説します。個人事業主(フリーランス)の方への情報も追加しました。
結論:役員報酬は助成金・補助金の対象になる?ならない?【2025年最新】
まず結論からお伝えすると、「多くの事業系補助金でも内部人件費(役員報酬含む)は対象外。外注費・専門家経費なら対象になり得る」というのが2025年最新の制度における実態です。
大きく分けると、以下の2つのパターンを覚えておきましょう。
- 原則NGなケース: 従業員の雇用維持や待遇改善を目的とした「雇用関係の助成金」
- 多くがNGなケース: 新規事業や研究開発を目的とした「事業系の補助金」
なぜ、このような違いが生まれるのでしょうか。それぞれの理由を詳しく見ていきましょう。
ポイント1:なぜ?「雇用関係の助成金」で役員報酬が対象外になる理由
キャリアアップ助成金や人材開発支援助成金など、厚生労働省が管轄する「雇用関係の助成金」は、従業員の雇用を守ることを目的としています。
これらの助成金の多くは、**雇用保険の加入者(被保険者)**が対象です。
経営者である役員は、原則として雇用保険に加入できません。法律上、「労働者」ではなく「使用者(経営者)」と位置づけられているためです。そのため、役員報酬は雇用関係の助成金の対象経費には含まれないのが一般的です。 (参照:厚生労働省「雇用保険の適用」mhlw.go.jp)
たとえ社長一人の会社であっても、この原則は変わりません。助成金申請においては、「経営者」と「従業員」の立場が明確に区別される、と覚えておきましょう。 ただし、使用人兼務役員など、労働者性が認められる例外的なケースについては、管轄のハローワークで個別に判断される場合があります。
ポイント2:【緊急修正】「事業系の補助金」における役員報酬の扱い【2025年最新】
一方、経済産業省などが管轄するIT導入補助金やものづくり補助金といった「事業系の補助金」では、内部人件費(役員報酬を含む)は補助対象外となるケースがほとんどです。
🚨 緊急修正事項
- IT導入補助金: 補助対象経費は「登録ITツールの導入費(ソフトウェア・オプション・役務)」のみであり、社内人件費・役員報酬は補助対象外です。(参照:IT導入補助金2025 公式FAQ it-shien.smrj.go.jp)
- ものづくり補助金: 公募要領の補助対象経費には「機械装置・システム構築費、技術導入費、知財関連費、外注費、専門家経費、クラウドサービス費、原材料費、海外旅費」などが明記されていますが、内部人件費の項目はありません(=補助対象外)。(参照:ものづくり補助金 公募要領 portal.monodukuri-hojo.jp)
以前は一部の補助金で、プロジェクトに直接従事した分の役員報酬を「人件費」として計上できる可能性がありましたが、2025年最新の制度では、多くの中小企業向け事業系補助金において、内部人件費(役員報酬含む)は対象外と明確化されています。
そのため、補助金活用を検討する際は、外注費や専門家経費など、外部に支払う費用であれば補助対象になり得ることを念頭に、事業計画を設計することが重要です。
公募要領の参照方法 申請を検討する補助金の「公募要領」を必ず入手し、「補助対象経費」の章(例:ものづくり補助金では2.7節)を熟読してください。ここに、何が補助対象となり、何が対象外かが具体的に記載されています。
ポイント3:助成金・補助金申請前に確認すべき役員報酬チェックリスト
申請準備を始めてから「役員報酬が対象外だった…」と慌てないために、事前に以下の点を確認しておきましょう。顧問税理士に相談する際にも役立ちます。
□ 1. 助成金・補助金の目的は何か?
- 従業員の雇用や待遇改善が目的(雇用関係)か?
- 新規事業や研究開発が目的(事業系)か?
□ 2. 公募要領で「補助対象経費」の項目を必ず確認したか?
- 「人件費」に関する記載があるか?
- 特に「内部人件費」「役員報酬」が対象外とする注意書きはないか?
- 外注費や専門家経費は対象となるか?
□ 3. 役員の業務内容を明確に分けられるか?
- 通常の経営業務と、プロジェクト固有の作業を区別できるか?
- プロジェクトへの関与を客観的に証明できるか?(※内部人件費が対象外の場合でも、事業計画の妥当性を示す上で重要となる場合があります)
これらの点をクリアにしておけば、スムーズに申請準備を進めることができます。
ちなみに、こうした補助金活用の検討とあわせて、会社の利益と個人の手取りを最大化する「役員報酬の最適額」を見直しておくことも重要です。
当サイトの「役員報酬決め方ナビ」では、社会保険料や税金の負担を考慮した最適な役員報酬額を無料でシミュレーションできます。補助金で得た資金を最大限に活かすためにも、ぜひ一度お試しください。
個人事業主(フリーランス)は“自分の取り分”を経費にできる?【2025年最新】
法人経営者向けの「役員報酬」とは異なり、個人事業主(フリーランス)には「役員報酬」という概念がありません。
自分の取り分は経費にならない(事業主貸) 個人事業主の場合、事業で得た利益はそのまま事業主個人の所得となります。事業主が生活費などを事業用口座から引き出した場合、それは「事業主貸」として処理され、経費にはなりません。
青色事業専従者給与の要件 家族を事業に専従させる場合、「青色事業専従者給与」として給与を支払うことで、その給与を経費にすることができます。ただし、以下の要件を満たす必要があります。(参照:国税庁「青色事業専従者給与と事業専従者控除」nta.go.jp)
- 青色申告者であること
- 専従者が事業主と生計を一にする配偶者や親族であること
- その年の12月31日現在で15歳以上であること
- その年を通じて6ヶ月を超える期間、その事業に専ら従事していること
- 「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出していること
- 届出書に記載された金額の範囲内で支払うこと
外注費の源泉徴収(10.21%、100万円超部分20.42%) 個人事業主が外部のフリーランスなどに業務を委託し、報酬を支払う場合、その報酬の種類によっては源泉徴収義務が発生します。特に、原稿料、講演料、デザイン料、士業(税理士、弁護士など)への報酬などが該当します。
- 源泉徴収税額: 報酬額に**10.21%**を乗じた金額。
- 100万円を超える部分: 同一の者に対して1回の支払いが100万円を超える場合、その超える部分については**20.42%**の税率が適用されます。
- 納付期限: 源泉徴収した税金は、原則として支払った月の翌月10日までに税務署に納付する必要があります。 (参照:国税庁「報酬・料金などの源泉徴収」nta.go.jp) インボイス制度導入後も源泉徴収の計算方法自体は変わりませんが、適格請求書発行事業者からの請求書には消費税額が明記されるため、源泉徴収の対象となる「報酬額」が税抜か、税込かを確認して計算する必要があります。
まとめ:専門家と相談し、最適な報酬設計を【2025年最新】
助成金・補助金と役員報酬の関係について、2025年最新の制度に基づいて解説しました。
- 雇用関係の助成金では、役員報酬は原則対象外。
- 事業系の補助金では、内部人件費(役員報酬含む)は多くが対象外。外注費や専門家経費なら対象になり得るため、公募要領で「補助対象経費」を必ず確認すること。
- 個人事業主は自分の取り分を経費にできない(事業主貸)。家族への給与は青色事業専従者給与の要件を満たせば経費化可能。
- 外注費には源泉徴収義務が発生する場合がある(10.21%、100万円超部分20.42%)。
助成金・補助金の制度は複雑で、要件も頻繁に変わります。ご自身の判断だけで進めるのはリスクが伴います。
申請を検討する際は、顧問税理士や社会保険労務士などの専門家に必ず相談しましょう。その上で、本記事のチェックリストやシミュレーションツールをご活用いただければ幸いです。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については顧問税理士にご相談ください。