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【2025年最新】標準報酬月額の境界と40歳の介護保険料|等級またぎで損しない役員報酬の決め方

【2025年最新】標準報酬月額の境界と40歳の介護保険料|等級またぎで損しない役員報酬の決め方

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【2025年最新】標準報酬月額の境界と40歳の介護保険料|等級またぎで損しない役員報酬の決め方

「役員報酬をいくらに設定すれば、手取りが一番多くなるんだろう?」

法人化して被用者保険に加入している一人社長や小規模法人の経営者にとって、これは本当に悩ましい問題ですよね。特に、社会保険料は会社と個人の両方にとって大きな負担です。

【対象読者について】 本記事は、**法人を設立し、健康保険・厚生年金といった被用者保険に加入している個人開発者・フリーランス(=役員)**の方向けの内容です。個人事業主として国民健康保険・国民年金に加入されている方には「標準報酬月額」や「等級またぎ」の仕組みは適用されません。個人事業主の方は「個人事業主の方へ」のセクションをご参照ください。

実は、この社会保険料には、知っているだけで年間10万円以上も負担を減らせる可能性がある「境界線」が存在します。

この記事では、特に大きな影響がある2つのポイントに絞って、役員報酬を最適化する方法をわかりやすく解説します。

  • 40歳から始まる「介護保険料」の負担増
  • 報酬額が1円違うだけで負担が跳ね上がる「等級またぎ」の仕組み

この記事を読めば、社会保険料の仕組みを理解し、ご自身の会社と個人の負担を最小限に抑えるヒントが得られます。

40歳になると社会保険料が上がる「介護保険料」の仕組み

40歳を迎えると、健康保険料に加えて「介護保険料」の負担が始まります。これは、将来の介護サービスを支えるための大切な保険料です。

「え、また負担が増えるの?」と思いますよね。そうなんです。具体的にどれくらい増えるのか、見てみましょう。

40歳になると、どれくらい負担が増える?

介護保険料は、40歳到達の翌月から健康保険料と合わせて徴収が始まり、65歳到達の前月まで続きます(※1日生まれの場合は当月から)。

例えば、役員報酬が月額50万円の場合を考えてみます。(※東京都協会けんぽ、2025年度の料率で計算。健康保険料率9.98%、介護保険料率1.82%と仮定)

  • 39歳まで: 健康保険料(一般) + 厚生年金保険料
  • 40歳から: 健康保険料(一般) + 厚生年金保険料 + 介護保険料

この介護保険料の追加によって、月々の社会保険料は以下のように増加します。

  • 本人負担分: 標準報酬月額50万円 × 介護保険料率1.82% × 1/2 = 月額4,550円の増加
  • 会社負担分: 標準報酬月額50万円 × 介護保険料率1.82% × 1/2 = 月額4,550円の増加
  • 本人+会社合計: 月額9,100円の増加、年間だと約109,200円もの負担増です。

ご自身だけでなく、役員になっているご家族が40歳を迎えるタイミングでも同様に負担が増えるため、事前に知っておくことが大切です。

1円で年間10万円以上の差?「等級またぎ」の落とし穴

社会保険料の計算は、実際の月給そのものではなく、「標準報酬月額」という区切りの良い金額を使って行われます。この標準報酬月額は、報酬額に応じて「等級」というランクで分けられています。

問題は、この等級の境界線をわずかに超えるだけで、社会保険料がガクンと上がってしまうことがある点です。これを「等級またぎ」と呼んでいます。

等級またぎの具体例と計算式

言葉だけだと分かりにくいので、具体的な例で見てみましょう。 ここでは、標準報酬月額が620,000円(健康保険31等級相当)と650,000円(健康保険32等級相当)の境界線である「月額報酬635,000円」を例に比較します。(※東京都協会けんぽ、40歳以上、2025年度の料率で計算と仮定)

【前提とする料率】

  • 健康保険(一般)本人負担:4.99%
  • 介護保険(40歳以上)本人負担:0.91%
  • 厚生年金保険 本人負担:9.15%
項目Aさん(月額報酬 634,999円)Bさん(月額報酬 635,000円)
標準報酬月額620,000円650,000円
健康保険料(本人負担)620,000円 × (0.0499 + 0.0091) = 36,580円650,000円 × (0.0499 + 0.0091) = 38,340円
健康保険料(会社負担)620,000円 × (0.0499 + 0.0091) = 36,580円650,000円 × (0.0499 + 0.0091) = 38,340円
厚生年金保険料(本人負担)620,000円 × 0.0915 = 56,730円650,000円 × 0.0915 = 59,475円
厚生年金保険料(会社負担)620,000円 × 0.0915 = 56,730円650,000円 × 0.0915 = 59,475円
社会保険料合計(本人負担)93,310円97,815円
社会保険料合計(会社負担)93,310円97,815円
社会保険料合計(本人+会社)186,620円195,630円
月額の差額(本人負担)-4,505円
月額の差額(会社負担)-4,505円
月額の差額(本人+会社合計)-9,010円
年間の差額(本人+会社合計)-108,120円

いかがでしょうか。月額の役員報酬がたった1円違うだけで、年間の社会保険料(本人+会社合計)に約10.8万円もの差が生まれてしまいました。

この差額は以下の計算式で導き出されます。 等級またぎによる月額差額 = (等級差の標準報酬月額)×{[一般健康保険料率+介護保険料率(該当のみ)]×1/2+厚生年金保険料率×1/2} 例: (650,000円 - 620,000円) × {(0.0998 + 0.0182) / 2 + 0.183 / 2} = 30,000円 × (0.0590 + 0.0915) = 30,000円 × 0.1505 = 4,515円 (本人負担の月額差額) ※上記表の差額と若干異なるのは、料率の小数点以下の丸め処理によるものです。

ご自身の給与を自分で決められる経営者だからこそ、この「等級」を意識して報酬額を設定することが、賢い節約につながるのです。 なお、厚生年金保険には標準報酬月額の上限(現在65万円)があり、健康保険も等級が上がるにつれて上限が設定されています。

役員報酬を決める前に!確認すべき3つのステップ

では、具体的にどうすれば良いのでしょうか。役員報酬を決める前に、以下の3つのステップで確認してみましょう。

ステップ1:ご自身と役員家族の年齢を確認する

まずは、ご自身と役員になっているご家族が、近い将来に40歳や65歳を迎えるかを確認しましょう。

  • 40歳到達の翌月から介護保険料の負担が始まり、
  • 65歳到達の前月で介護保険料の負担がなくなります。 (※各年齢の1日生まれの場合は、その月から適用されます。) このタイミングは、役員報酬の見直しを検討する良い機会です。

ステップ2:最新の標準報酬月額表を確認する

次に、協会けんぽや日本年金機構のウェブサイトで、最新の「保険料額表」を確認します。この表に、報酬額の範囲と等級、そして具体的な保険料が記載されています。

特に注目すべきは、等級が変わる境界の金額です。

ステップ3:境界線のすぐ下の金額で報酬をシミュレーションする

等級の境界線を確認したら、その境界線をまたがない、すぐ下の金額で役員報酬を設定した場合の社会保険料や税金をシミュレーションしてみましょう。

役員報酬の改定は、原則として事業年度開始から3ヶ月以内に行う「定時決定」で反映されます。ただし、報酬額が大幅に変動し、2等級以上の差が生じた場合は「随時改定」として、定時決定を待たずに標準報酬月額が変更されることがあります。

ただ、所得税や法人税なども含めてトータルで計算するのは、かなり複雑で手間がかかりますよね。

そんな時に便利なのが、無料のシミュレーションツールです。

役員報酬決め方ナビを使えば、社会保険料だけでなく、所得税や法人税まで含めた会社と個人の総負担額を自動で計算し、最適な報酬額を見つけることができます。

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個人事業主の方へ

本記事で解説した「標準報酬月額」や「等級またぎ」の仕組みは、法人化して被用者保険(健康保険・厚生年金)に加入している役員に適用されるものです。

個人事業主として国民健康保険・国民年金に加入されている場合、社会保険料の計算方法は大きく異なります。

  • 国民健康保険の介護保険料: 40歳から64歳までの方が対象となり、国民健康保険料の一部として徴収されます。自治体によって計算方法(所得割、均等割、平等割など)や料率が異なり、所得に応じて賦課されます。65歳以降は、介護保険第1号被保険者として別途保険料を納めます。
  • 国民年金: 定額制であり、報酬額による「等級」の概念はありません。

国民健康保険料は、お住まいの市区町村のウェブサイトで試算できる場合があります。「〇〇市 国民健康保険料 試算」などで検索してみてください。

まとめ:賢い報酬設定で、会社と個人の手残りを最大化しよう

今回は、社会保険料の負担に大きく影響する「40歳からの介護保険料」と「等級またぎ」について解説しました。

  • 40歳到達の翌月から介護保険料の負担が始まり、年間で約5.4万円(本人負担)も保険料が増える
  • 役員報酬が等級の境界線を1円超えるだけで、年間10万円以上の無駄な負担増(本人+会社合計)につながる可能性がある

ご自身の役員報酬を自分で決められる立場だからこそ、こうした仕組みを理解し、戦略的に報酬額を設定することが大切です。

ぜひ一度、ご自身の役員報酬が最適な金額になっているか、確認してみてはいかがでしょうか。


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最終更新:2025年10月20日

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については顧問税理士にご相談ください。