【2025年最新】利益1,200万円の小規模法人で役員報酬を最適化する方法(東京都・社保2025年度料率対応)
「今年の利益だと、役員報酬はいくらが妥当なんだろう…」 「夫婦で役員をしているけど、どう分けるのが一番お得なの?」
会社の利益が1,000万円を超える規模の会社の経営者の方から、こんなご相談をよくいただきますよね。顧問税理士に相談する前に、ご自身でいくつかのパターンを検討しておきたい、という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんなお悩みを解決するために、具体的なケーススタディを通じて役員報酬の最適化プロセスをシミュレーション形式で解説します。
本記事は2025年分の所得税改正および2025年度(令和7年度)の社会保険料率(東京都)を前提としています。最新の料率・上限・控除額を本文内で明示し、計算に反映しています。
この記事でわかること
- 会社の利益1,200万円の法人モデルケース
- 役員報酬の配分によって、手取り額がどう変わるかの比較シミュレーション
- 会社と個人の総負担を最小化する考え方
- 無料で使えるシミュレーションツールの活用法
今回のモデルケース:斉藤さん(仮名)の会社
まずは、今回のシミュレーションの前提となる会社情報をご紹介します。多くの中小企業に当てはまる、一般的なモデルです。
- 会社形態: 合同会社
- 事業内容: Webコンサルティング
- 売上(年商): 3,000万円
- 経費: 1,800万円
- 会社の利益(役員報酬支払前): 1,200万円
- 役員構成:
- 夫(社長):45歳
- 妻(専従役員):42歳
- 所在地: 東京都
- その他: 扶養親族なし、夫婦ともに社会保険に加入(役員のため雇用保険は対象外)
斉藤さんの悩みは、「利益1,200万円を、夫婦でどう分けるのが一番手残りが多くなるのか?」という点です。
シミュレーションの前提条件(2025年度・東京都)
今回のシミュレーションでは、以下の条件で計算しています。
- 健康保険料率(協会けんぽ・東京都): 9.91%(折半 4.955%)
- 介護保険料率: 1.59%(折半 0.795%)※40歳以上65歳未満に適用
- 厚生年金保険料率: 18.3%(折半 9.15%)
- 子ども・子育て拠出金率: 0.36%(会社負担のみ)
- 社会保険料の標準報酬月額上限:
- 健康保険: 139万円(等級50)
- 厚生年金: 65万円(等級31)
- 所得税・住民税: 2025年分の基礎控除・給与所得控除改正を適用
- 法人税等: 利益ゼロの場合、地方法人住民税の均等割のみ(東京都の小規模法人で年額約7万円を想定)
- 賞与: なし
- 端数処理: 円未満切捨て
パターン1:報酬を社長(夫)に集中させたシミュレーション
まず、よくあるパターンとして、利益のすべてを社長である夫の役員報酬に設定した場合を見てみましょう。
- 夫の役員報酬: 1,200万円(月額100万円)
- 妻の役員報酬: 0円
この場合、年間の社会保険料や税金の負担は以下のようになります。(概算)
| 項目 | 金額(年間) |
|---|---|
| 【個人負担】 | |
| 社会保険料(夫) | 約140.4万円 |
| 所得税・住民税(夫) | 約191.1万円 |
| 【会社負担】 | |
| 社会保険料(夫) | 約144.7万円 |
| 法人税等 | 約7万円 |
| 【合計負担額】 | 約483.2万円 |
会社と個人の手元に残るお金は、約716.8万円(1,200万円 - 483.2万円)となりました。 報酬額が大きい分、個人の税率が高くなってしまい、負担が大きくなっているのがわかりますね。
パターン2:夫婦で均等に配分したシミュレーション
次に、利益1,200万円を夫婦で半分ずつ、600万円ずつに分けた場合を考えてみましょう。
- 夫の役員報酬: 600万円(月額50万円)
- 妻の役員報酬: 600万円(月額50万円)
| 項目 | 金額(年間) |
|---|---|
| 【個人負担】 | |
| 社会保険料(夫・妻 合計) | 約178.8万円 |
| 所得税・住民税(夫・妻 合計) | 約94.6万円 |
| 【会社負担】 | |
| 社会保険料(夫・妻 合計) | 約183.1万円 |
| 法人税等 | 約7万円 |
| 【合計負担額】 | 約463.5万円 |
なんと、合計負担額が約463.5万円に下がりました。 パターン1と比較して、年間で約19.7万円も負担が減っています。
結果として、会社と個人の手元に残るお金は、約736.5万円(1,200万円 - 463.5万円)となり、手取りが大幅に増えました。
なぜ配分すると負担が減るシミュレーション結果になるの?
不思議に思うかもしれませんが、これは所得税が「累進課税」という仕組みだからです。所得が高いほど税率も高くなるため、一人の所得を高くするより、複数人に分散した方が低い税率を適用できるのです。
今回のケースのように、所得を分散させることで、世帯全体での手取り額を最大化できる可能性が高まります。特に2025年分の所得税改正(基礎控除・給与所得控除の見直し)により、手取り額への影響はさらに大きくなる可能性がありますね。
最適なバランスを見つけるには?
今回は「均等配分」を試しましたが、必ずしも均等がベストとは限りません。社会保険料の等級の境目や、配偶者控除などを考慮すると、さらに最適なバランスが見つかることもあります。
「じゃあ、どうやって計算すればいいの?」と思いますよね。 この複雑な計算を、ご自身で何度も試すのはとても大変です。
そこで、役員報酬決め方ナビを使えば、会社の利益や役員の情報を入力するだけで、最適な報酬バランスを自動でシミュレーションできます。
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個人開発者・フリーランスが知っておきたい税務のポイント
役員報酬の最適化は法人成り後の論点ですが、個人事業主の方も知っておきたい税務のポイントがあります。
インボイス制度の経過措置を理解する
2023年10月1日から始まったインボイス制度ですが、登録していない事業者からの仕入れについても、一定期間は仕入税額控除が認められる経過措置があります。
- 2023年10月1日〜2026年9月30日: 仕入税額相当額の80%控除可能
- 2026年10月1日〜2029年9月30日: 仕入税額相当額の50%控除可能
この期間を有効活用し、ご自身の事業に合った対応を検討しましょう。
青色申告特別控除を活用する
個人事業主の方は、青色申告を行うことで最大65万円の特別控除を受けることができます。
- 65万円控除: 複式簿記による記帳、e-Taxによる申告または電子帳簿保存
- 55万円控除: 複式簿記による記帳
- 10万円控除: 単式簿記による記帳
控除額を最大化するためにも、複式簿記での記帳とe-Taxでの申告を検討するのがおすすめです。
2025年分の基礎控除改正に注目
2025年分の所得税から、基礎控除や給与所得控除が見直されます。特に基礎控除は、合計所得金額に応じて58万円〜最大95万円の特例が適用される場合があります。ご自身の所得状況に合わせて、控除額がどう変わるか確認しておきましょう。
まとめ:報酬の決め方一つで手取りは大きく変わる
今回のケーススタディでは、役員報酬の配分を見直すだけで、年間の手取り額が約19.7万円も増えるシミュレーション結果となりました。
- ポイント1: 役員報酬は一人に集中させず、所得を分散させると有利なシミュレーション結果になる場合が多いです。
- ポイント2: 所得税の累進課税や社会保険料の仕組み、そして2025年分の税制改正を理解することが重要です。
- ポイント3: シミュレーションツールを活用して、自社に合った最適額を見つけるのが効率的です。
役員報酬は、一度決めると原則として一年間変更できません。ただし、期首から3か月以内の定期同額給与の改定や、役員の職務内容の変更など、特定の事由が発生した場合には改定が認められることもあります(法人税法施行令第69条)。決算前のこの時期に、ぜひ一度、ご自身の会社の役員報酬を見直してみてはいかがでしょうか。
ただし、最終的な報酬額の決定や税務申告については、必ず顧問税理士にご相談ください。本シミュレーションは、あくまで意思決定のための参考情報としてご活用いただくものです。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については顧問税理士にご相談ください。